伯耆大山1711�b　 ２００４年10月29日

大山はその魅力を余すところなく見せてくれた １０月２９日(土)晴れ　我孫子5:12＝5:43上野5:47＝6:06浜松町6:16＝6:36羽田空港7:25(ANA)＝8:40米子空港＝〔大山登山〕登山口11:00（夏山登山道）⇒12:20六合目⇒13:30弥山14:10⇒15:00六合目（行者谷コース）⇒15:45元谷⇒16:30大山寺<行動時間5時間30分>松江・東急イン（泊） 　10月29日：この日の米子市の天気予報は曇りのち雨｡これからの３日間は天気が悪いというので参加者の表情はぼくと同じく硬い｡当然だ｡ところがだれもが予想できなかった展開になった。この日の東京は快晴で米子行ＡＮＡ８１１便の機内からは左手にくっきりと富士が見える｡南アルプスが見える｡琵琶湖も見える。しだいに期待が高まる｡そして着陸態勢に入ると左手に大山が見える｡なんと米子は晴れていたのである｡ 　ANA８１１便の機内から望む富士｡青富士とは珍しい 　そして『伯耆大山』はこれ以上ないという魅力を余すところなく見せてくれた。少しは出し惜しみをしてもいいのではないかと思うほどだ｡これはもったいないくらいの贅沢だよ｡まずは鍵掛峠からの眺めだ｡ここは大山が一番美しく見える場所である｡白い切り立った荒々しい南壁を背景にブナの燃えるような紅葉が広がる。この景観を存分に見るがいい｡これで一気に皆さんが笑顔になった｡ぼくも胸をなでおろすことができた。 大山がいちばん美しく見える鍵掛峠からの眺め（南壁） 　 　次は頂上からの景観だ｡頂上が近くになると居ても立っても居られなくぼくはひとり頂上へ急いだ｡剣が峰に青春の思い出を重ねたかったからだ｡剣が峰の鋭鋒がすくっと立ち上がり、その先にナイフエッジの稜線が延々と続いている。とても1700�bの標高とは思えない迫力である。このさまを見てもらいたかった｡ 　頂上は午後１時を過ぎたというのにご覧のとおりの青空だ｡切り立った稜線を目で追う｡若いころに無我夢中で東から西に縦走してきた。怖い思いをして歩いてきた｡終点がいま腰を下している弥山だった。ホッとしたことを今でも思い出す｡その場にいま立っている｡感無量だった｡ 伯耆大山の頂上。予報が外れてこの日は青空だ 　まだある。西日本最大のブナの森だ。紅葉は情報どおりピークだった｡全神経を研ぎ澄まして森の声を聴く｡黄葉の微妙な色彩の変化が日差しで煌き、風に舞う｡参加者からの感嘆の声が響く｡ブナの黄葉の盛りに出会えるのは簡単なようで実際は難しい。この幸運に感謝しよう｡ 西日本最大のブナの森。紅葉のピークだった 　これで終わらないのがこの日の大山だ。元谷に降り立つ。こんどは厳しく険しい男性的な山容の北壁が待っていった｡覆い被さってくるような圧倒的な姿で目の前に立ちはだかる。北アルプスの涸沢を彷彿とさせる｡ここまでやってくれるのか。 元谷から北壁を仰ぐ。覆い被さってくるようだ 北壁の前に建つ紅葉に包まれた元谷避難小屋 　その北壁の前に元谷避難小屋がある。ぼくはこの小屋に足をすすめた。間取りが記憶とは違っていた｡すぐに気がついた｡1988年に立て替えられていた。そうだよな｡ここに泊まったのは縦走した帰り道だ。もう３５年以上も前になる｡北壁と小屋に向かってカメラを向けた。きょうはありがとう、もう逢えないかな、と呟きながら。 　志賀直哉の「暗夜行路」には大山の朝明けの美しい風景描写がある。これに惹かれて大山を歩いた人は多い｡またこんな一節がある。「疲れ切ってはいるが、それが不思議な陶酔感となって彼に感じられた｡彼は自分の精神も肉体も、今、この大きな自然の中に溶込んで行くのを感じた」―山を歩いている者ならだれもが共有する感覚だ｡このころ霊峰大山に一般登山が始まったらしい。 大山は老齢期の山､崩壊が進む｡頂上まで木道と階段状の道が続く 　大山は老齢期の山で崩壊が進んでいる｡それに人気のある山だからオーバーユースの問題も抱えている｡登山道の保守がたいへんだ｡登山口から頂上まで木道と階段状の道が続く｡これには閉口したが、どうしようもない｡それだけに観光化が進み“擦れた”山になった｡若い頃の思い出を辿るとこの山は縦走するのが一番いいのだが昭和50年代に危険ということで禁止になった｡今回歩いた道は皆さんにはきっともの足りないのではないかと思う｡帰り道の大神山神社の佇まいは実にいい｡ 　 　今夜の宿は松江駅前の〔東急イン〕。宍道湖畔の居酒屋で伯耆大山に乾杯だ｡明３０日の天気は雨のち曇り｡リーダーは眠れない｡無駄なことだと知りながらあちこちの１７７に電話するが変わらないものは変わらない｡ BACK　HOME　NEXT