船形山は宮城県と山形県の境に位置しています。宮城県では船形山、山形県では御所山と呼んでいます。ブナの森の保存運動で有名な山です。
　ぼくは３度ほどこの山を歩いています。最初の２回が新緑の時期､最後に紅葉の時期です。紅葉もすばらしいと聞いていました。その伝聞はたしかにそうだという予感がありました。
　１０月も山形県側の柳沢コースをとりました。登山口手前にスキー場「黒伏高原スノーパーク・ジャングル・ジャングル」があります。この辺りから見事な紅葉です。山を歩かない人はここの景色で満足するはずです。対岸の山は全山紅葉で期待にたがわない景観でした。これから先､期待を抱かせるには十分すぎるほどです。
　新緑のときの森を知っているだけにやはり期待通りのブナの紅葉が続きます。ブナの紅葉といっても浅黄色から茶褐色まで多様なグラデーションがあります。どの紅葉がいいのか､各人の好みがありましょう。
　黄色の輝度が高いときが紅葉の盛りというのでしょうか。森の中に日が差せば森全体が黄金色に輝きます。
　この森もブナの実が大豊作でした。実を拾っている人がいました。２０００年はブナの実の大豊作の年だったのです。
　圧巻は「仙交小屋跡」周辺の紅葉でした。たぶん最盛期の紅葉だったのでしょう。立ち去りがたく､後ろ髪を引かれる思いで、何度も何度も振り返りながらあとにしました。ここは水場も近くテント場には最適です。テントを張って飽きるまで眺めていたい気持ちでした。
　一緒だった家人の言葉をかりれば「まるで妖精がいまにも現われてくる」ような紅葉に彩られた森でした。