越後駒ケ岳2003㍍

２００５年６月２６日

山開き登山に参加
幸運にも、地図に記載のない「学習院ルート」を登り、
ブナの結実をこの目で確かめることができた

【山行日】　２００５年６月２６日(日)（夜行日帰り）
【メンバー】　単独行
【地形図】　八海山(1/25,000)　　　　　　　　　　　　
【山　　域】　新潟
【コース＆タイム】
６月２５日（土）晴れ：自宅２１：４０＝我孫子駅２２：０６＝２２：４０日暮里＝２２：５６池袋＝池袋東口２３：３５（高速バス＠３６２０）＝小出ＩＣ
６月２６日（日）晴れ：３：０５小出ＩＣ（小出タクシー予約＠１４５０）＝３：２０小出駅５：００＝（３２５号線、シルバーライン、銀山平）＝６：２５石抱橋付近登山口（850㍍）６：３５（学習院ルート）⇒＝８：００道行山⇒＝９：０５小倉山⇒＝９：５５百草ノ池⇒＝１１：００駒の小屋１１：１５⇒＝１１：３０越後駒ケ岳１２：００⇒＝１２：１０駒の小屋１２：２０⇒＝１３：００百草ノ池⇒＝１３：３５小倉山⇒＝１５：４０駒の湯登山口＝１６：４０小出駅１７：０９（＠７２６０）＝１７：１６浦佐乗換（上越新幹線）１７：２２＝１８：５８上野１９：０６＝１９：４０我孫子＝２０：００自宅

□山開き登山
　今年は山行を毎回リポートしている。自分の楽しみに書いているのだが、すこしばかり負担になるときがある。今回の越後駒ケ岳はだれも知っているだろうし、資料もありあまるほどあるのだから、今回の記録はパスしようかと考えていた。
　ところが、そんなときに限って記録しなければならない貴重な体験をしたのだから、やはり書かなければならない。
　その貴重な体験とは、魚沼市主催の山開き登山に参加して、ひとつは地図に記載のない「学習院ルート」を歩いたこと。もうひとつは、ブナの結実をこの目で確かめたことである。
　前者の「学習院ルート」は学習院大学の山岳部が切り開いたルートだが、これまで登山道の維持を大学山岳部がしてきたが、部員減少のため今は営林署に管理が移っているのだという。こんごもこのルートは地図に記載しない予定だというのだから今回歩けたのはラッキーだった。
　後者のブナの結実は私にとっては今年の重大関心事。ブナの結実は周期性があり、今年は各地でブナの花が咲いたという情報が多く、結実が期待されていた。それがこうもうまい具合にブナの実を目の当たりにすることができたのだからうれしかった。

　山開き登山に参加したのは魚沼市に山の状況を電話で尋ねたのがきっかけだった。山開き登山のあることも教えてくれた。
　魚沼市は広域合併し、市内には浅草岳、守門岳、越後駒ケ岳、平ケ岳、荒沢岳など知名度の高い山を抱えている。これらの山開きを市主催でやるのだという。
　７月の北海道山行を控えているので、６月はそのためのトレーニングにでも出かけなければならないと思いながらも、特に山を予定していなかったので、駒ヶ岳に参加することにした。山開きに参加することなどめったにないことだが、駒ヶ岳にしようと決めたのは、交通の便宜を図ってくれることにあった。この山はアプローチが面倒だからだ。
　当初のコースは一般的な「枝折峠からのコース」でピストンだった。枝折峠への３５２号線はこの山開きに合わせて開通するのだが、この冬の豪雪の影響がいまもあり、開通の作業が遅れ、そのうえ道路の補修もあり、間に合いそうもないと判断したとかで、コースが変更になった。こんどは「駒の湯からのコース」である。駒の湯からの日帰りピストンとなると枝折峠からの歩行時間どころではなく、すごい健脚コースになる。それでも出発時間と下山時間は枝折峠からの登山と変わらないというのだ。どうも納得のいかない説明でおかしいなと思いながらも、北海道山行前のトレーニングにはいいコースだと思い込むことにした。

　「小出駅に午前５時集合」だというので、前日出発になる。夜行の高速バスにした。池袋東口を２３時３５分出発である。土曜日の２３時池袋。この蒸し暑い夜中に若者ですごい賑わいだ。中高年の男など、とくに白頭の男など見当たらない。そんな風に最近自分を意識することが気にくわないのだが自分だけが完全に浮いている。
　新潟方面行きの高速バスはこの日４台が出発した。夜行バスは久しぶりだ。ぼくは３号車だ。この新潟方面行きの夜行バスはすべて座席配列が４列だという。４列だと座席自体が狭いうえに隣の人と肘がぶつかるので好きではない。夜行バスを利用するときはいつも座席の配列を見る。３列配列だと安心する。これだと広く独立しているので４列配置よりもずっといい。遠隔地はほとんどが三列配列なので夜行バスも以前ほど毛嫌いせずに利用できるようになった。新潟方面は近いのでいまだに４列配置なのかもしれない。
　バスに乗り込むとぼくの不安が的中した。ぼくのとなりはとても太った若い人であった。席がいかにも窮屈そうで肘がぼくの方まで自然と飛び出ている。他の席も空いていたので運転手に席の交換を申し出ようとしたが、そうなると隣の人にあてつけとに思われるのがいやなので我慢することにした。
　小出到着が翌朝の３時だというので早々に座席を倒して寝ることにする。やはり寝づらい。でも１時間ぐらいはうつらうつらしたのではないだろうか。最初の停車地となる越後湯沢で後ろ人が二人下車した。ぼくがそこに移ろうとしたら、なんと隣の方が移ってくれた。彼も自分が太っているので隣の人に迷惑をかけていると気にしていたのだろうか。
　すぐに小出ＩＣに着いた。出発前までバス停車地「小出」はてっきり「小出駅」と思っていた。「小出」はインターチェンジであった。だから集合場所の小出駅にはここから徒歩かタクシー利用になることを直前になって知った。すぐに小出タクシーに電話して予約した。
　午前３時に小出インターチェンジに着いた。３号車から下車したのはぼくと若い男二人の３人だけだった。登山スタイルはぼくだけだった。もっと都心から山開きに参加するのではないかと思っていただけに意外だった。
　目の前に予約したタクシーが待機していた。運転手さんによると、ほかにここで下車したのは１号車から登山者が２人だけだという。その２人はバスの待合室に入ったという。どこへ行くのだろうか。それと昨日３５２号線が通れるようになったとタクシー会社に知らせがあったということだ。
　１０分もしないうちに小出駅に着いた。だれもいない。駅舎は明かりがついているが、待合室など構内へはかぎがかかっていて入れない。だれもいないのをいいことに、駅前にシートを敷いてザックを枕にして横になった。夜行バスなので眠れなかったし、ここで少しでも休養をとっておきたかった。
　４時を過ぎると２人の登山者が姿を見せた。後で聞いたところ、他に下車した２人だった。インターチェンジからここまで４５分かけて歩いてきたのだという。さらにもう一人。
　５時前にマイクロバスが止まった。駅前集合組はこの４人だけだった。
　
　きょうは駒ケ岳ばかりでなく荒沢岳の山開きでもある。このマイクロバスで途中まで一緒に行く。
　バスのなかで市の担当者と駒ケ岳コースについて話をするとどうもかみ合わない。私はこの時点できょう歩くのは駒の湯からのピストンだと思い込んでいる。ところが違っていたのだ。皆さんが知らないコースを歩くのだという。それは「学習院コース」といって、地図には記載されていないコースだという。これでやっと話が見えた。要は私の電話に出た市役所の人がたまたま勘違いして私には駒の湯からのピストンだと知らせたことが原因だった。

　途中の道で参加者を拾いながら旧湯之谷村の庁舎に着いた。ここで大勢が乗り込んできた。県外の方はマイカーできた人が多い。荒沢岳と駒ケ岳のメンバーである。参加者は前者が１６人、後者が１２人で、今年は参加者が逆転したのだという。参加者も年々減少気味だという。駒ヶ岳には参加者のほかに市観光課から３人と奥只見山岳会の２人がついた。
　きょうのリーダーを務める奥只見山岳会の方がコースの説明。
　「皆さん、きょうは天気がいいので快適な山行ができるでしょう。地図に記載のないルートを登るのですからきょう参加した人はラッキーです」

□学習院ルートとは　
　湯之谷庁舎から３５２号線でシルバーラインに入る。トンネルばかりのこの道から銀山平に出ると３５２号線にぶつかる。これを右折して枝折峠の方面に向かう。すぐに左手に荒沢岳登山口。ここで荒沢岳登山組をおろして進むと、北又川にかかる石抱橋がある。これをわたり、すぐ左手（西方面）に立派な林道が走っている。３５２号線とわかれてこの道に入る。するとすぐに左側にゲートのある分岐した林道を見る。この道を行くのだが通常は通行禁止だ。この日は営林署の許可を得ているのだろう。ゲートを開けて進む。この道は北の又川に沿って走っている。マイクロバス一台がやっと通れるような幅の細い林道だ。両側の木々が飛び出していて走るのに時々邪魔をする。右手から「柳沢」が道を横切り白沢へと流れ込んでいる。まもなく車がとまった。右手に赤テープがあった。ここが「学習院ルート」の登山口だ。先ほどの林道分岐から歩くとこの登山口まで一時間かかるという。この登山口から重量感のある駒ケ岳と中ノ岳、それに鋭角的な荒沢岳が見える。駒ケ岳はいまだにたっぷりと残雪を抱いている。とてもいい感じだ。結果的には使用しなかったがあわててアイゼンをザックに入れた。

□ブナの結実
　登山口の標高は８５０－８６０㍍。「学習院ルート」はここから北西の方向に延びる尾根伝いに「道行山」へ直登する道だ。細い道で気持ちがいい。はっきりして迷うことはない。一本調子の登りといった感じの道だ。体力ある学生が作ったから”遊び”がないね、といった冗談も飛び出す。
　このルートの尾根で休憩中のこと。
　「ブナの実がなっている」
　誰かの声が聞こえた。ちょうどぼくが休憩しているところのすぐ近くのブナの木だ。
　あわてて見上げた。枝もたわわに実がなっている。
　迂闊だった。心の準備ができていなかった。というのはブナの結実は私にとって今年の重大関心事であったのだが、よもやこのような場所でブナの結実をしかと見ることができるとは端から思ってもいなかったからだ。
　目の前に、ほんとうに目の前にブナの浅黄色の実がなっている。それはそれは木の枝すべてになっている。
　今年は各地からブナの開花が伝えられ、ブナの豊作を期待する声が多い。ブナの豊作は周期性があり、一般には５、６年おきに豊作になる。昨年は凶作だった。東北地方で前回の当たり年が２０００年だったので、そろそろかと期待していた矢先だった。
　ぼくの関心にピッタリあわせてブナの実が姿を現してくれたようで、できすぎた感じだった。もちろんうれしかった。
　ブナの結実を知らない人、関心のない人にとっては、夢中でカメラを向けているぼくはどのように映ったのだろう。
　これだけ幸運が続くと、やはりきてよかったとつくづく思う。自分の幸運さを素直に喜ぶ。これで秋が楽しみになった。

　道行山からの展望は素晴らしかった。駒ケ岳はもちろん、ぼくが二度歩いた中の岳から兎岳、さらに荒沢岳への稜線がぐるっと見回すことができた。
　道行山から少し下ると枝折峠からの道と合流する。
　ここから夏道と残雪の上を歩いて頂上を目指す。この日は天気がいいのだが蒸し暑い。汗をかく。水を飲む。小倉山から雪で覆われた百草の池を経て、雪のない急な岩場を越えると駒の小屋だ。ここから見上げる駒ケ岳は雪で覆われている。小屋の脇に水場だ。雪渓から引いた水なので冷たい。この暑さに自分でも呆れるほど飲んでしまった。
　ここからは各自の自由時間になった。頂上を目指すのもよし、昼ご飯にするのもよし。
　昼食前に頂上を目指すことにした。下山してくる人にアイゼンは必要かと尋ねたら不用だという。雪の斜面を踏んで頂上を目指す。
　稜線にでると雪は解けて夏道が出ていた。頂上も雪がなかった。
　頂上からの展望はもちろん抜群だ。記念写真を撮り景色を眺めていると、急にガスが出てきて中の岳や八海山がガスの中に隠れたが、それでもぼんやりとはその姿を見ることができた。
　登山口で奥只見山岳会のリーダーが正午過ぎるとガスが出てくるでしょうといったが、そのとおりになった。
　駒の小屋で昼食をとっていたら展望を楽しめなかったところだった。間一髪、間に合った感じだ。これもついていたとしか言いようがない。頂上で昼食とした。

　
　下山は頂上２００３㍍から３７０㍍の駒の湯を目指す。これがきつかった。長かった。さすがに最後のほうがウンザリし、建物が見えたときはほっとしたものだ。
　参加者は足が揃った人ばかりであった。最後は女性二人が少し遅れたが全員無事に下山できた。参加者ばかりでなく主催の市関係者もほっとしたことだろう。
　急に思いたって参加した山開き登山がこんなにも素晴らしい体験を与えてくれた。幸運が重なったとしか言いようがないのだが、魚沼市観光課の皆様と奥只見山岳会の皆様の心配りには感謝の言葉もないほどだ。

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